「弟子ではない」






服を全部脱がせた後に、これから何を始めるのか、ほとんど自分に宣言するような気持ちでキスしようとする。
すると奴は俯いてそれを交わし、そのままくるりと急に背を向けてしまった。
内心、俺は少しみっともない位うろたえたが、
しかしそれを全部表に出さないだけの分別はあったので、「このまま、これでやめてもいい。俺はな」
とやせ我慢ぎみに話し掛けた。後悔しているのかと思ったからだ。
「そうじゃない。あまりに、その」
少女は言いよどんでからこう続ける。
「お前が私に礼儀正しすぎるから。それがなければ次にいけないというわけでもないのに」
その非難が何に向けられていたか理解した俺はさすがにむっとして言った。
「お前な、俺をなんだと思ってんだよ。ケモノじゃあるまいし、いきなり入れるってわけにもいかないだろうが」
「違う。私が言いたいのは…師匠は私に教えようとしているということだ…これはこうあるべきだ、と言われているみたいだ。違うか?」
「クラピカ」
「こんなときにまで、私をただの弟子にするつもりなのか?」
その声にさらに非難の色が混じり、
「どうひどくされたっていいのに」
師匠になら。
最高の殺し文句を叩きつけてから、奴は俺の襟足に左手を伸ばして、ゆっくりそこを撫でた。
俺はうう、と喉を鳴らすとため息をついてクラピカを背中から抱きしめた。
「ぼろぼろにされたいらしいな」
「いつものことだろう、『師匠』」
その声には意地の悪い笑みが混じっていることが感じられたので、俺はヤツの首筋にかみついてやると、乱暴にその体をひっくり返した。

「…、やっぱりそれはするのか」
仕置きの続きのようなキスから開放されると、呆れたように弟子は言う。
「やり方にいちいち口をだすんじゃねえよ。傷つくだろうが」
本当のところ、娘に手を出してるような気分だったから、俺はあえてセオリーどおりに進めたかったのだ。
根拠のない罪悪感を払拭するように、そして暴走しないためにだ。それを言えばこいつはまた不満を口にするだろうが。
内股に掌を滑りこませると、クラピカは俺との体温差を堪えるように息を呑んだ。
その試練に耐えるような表情までもが隙のない美しさで、まるでそれを摘み取る俺を責めるようだ。
違う。俺じゃないんだ。本当に罰せられるべきなのは。
そう考えれば考えるほど、その台詞は言い訳じみてうつろに響く。
「ど、うすればいい…?」
震えながらそう問い掛ける声も何もかも愛しいように思えて。
俺は後悔しはじめていた。
「何も。そのまま」
力を抜かせるために愛撫を繰り返し、鮮やかさを増してきた緋の目から零れた泪を掬いとった。畜生。
お前があと十でも年上で、復讐なんて面倒なことの虜にもならず、それでずっと俺のそばにいてくれれば。
それが叶うならどんなに幸福だったろうか。この儀式めいた行為にもなんの罪悪感も抱かずにいられたのに。
「な、にか・・・言った?」
俺は答えずにクラピカの中に押し入った。まだ完全に受け入れる準備ができていなかった少女は低く呻くとまた泪を零す。
こうしている間にもきっとクラピカの頭の中では憎くてたまらない相手のことを思いつづけているのだと思うと、俺は面白くなかった。
その華奢な体を少し乱暴に揺さ振る。
「あ、…」
思い出すな。思い出すなよ。
俺は祈るような気持ちでいた。無駄なことだと知りつつも。


満足だろ?
こいつは四六時中あんたのことを考えているらしいぜ。


俺はそいつが少し羨ましかったのだ。
愚かなことだと理解して尚も。

「お前が、俺の子を産めたらいいのにな」
達した後に小さな胸に顔を埋めながら、つい口にだしてしまった。すぐに、あまりにも直ぐに後悔したが。
やや呆然としていたクラピカが、まだ衝撃を往なしきれないのだろう擦れた声で小さく「すまない」と言ったのを聞くにいたって、俺はさらに後悔した。「バカ、あやまるんじゃねえよ」
まったく、損な役割だ。
抱くんじゃなかった。お前には必要なことだったかもしれない。だけど俺には。



いつまで俺はこいつの傍らにいてやれるだろう。いつまでこうやって必要とされることができるのだろう。

残ったのはひどく身勝手な執着と、やがて失うには大きすぎる愛おしさ、それに後悔だけだった。






推定メニューへ


お絵かきリハビリのつもりだったので趣味に走りすぎました。
女体も師匠がヘタレなのも全部趣味です。
イニシアチブをピカ子さんがとってるのも趣味です。ええ。
(しかしあとでこれ修正するかも…)→11/14リライト。前編ができました。
ちなみに↓復帰後リハ絵

弟子ではない。