04.悪夢(または、眠れない。) 昨日の夜まではなかった傷がある。 それが兆候だったように思う。 やがて日に日に憔悴していく様子を見かねて、ある日俺はやむを得ずに夜中にベッドを抜け出す弟子の後を追った。 こんな夜更けにまで自分を痛めつけても強くなどなれるわけがない。 木立を分け入り奥へ奥へと足を踏み入れる弟子は立ち止まる様子もない。 彼がまた新しい傷を創る前に俺は声をかけることにした。 「毎晩抜け出して、一体何をしている」 びくりと体を震わせると立ち止まる。 しかし振り向くことはしない。 指示した以外のことをするな、と俺は重ねて言った。 焦りは何も生みはしない。そんなことははじめから言い聞かせてあるはずなのに。 「何か言え」 「…すまなかった。じき、帰る」 じき、だと? 「今ここで引き返せ。俺が何も気がついてないとでも?」 未だ振り返ろうとしない弟子に俺は近づく。 「ろくに眠ってないだろうが」 「ちゃんと帰る、…それから眠るから…」 「クラピカ!」 手を掴んで引き寄せると、拒むように俺の体を掌で避けた。 「ちゃんと帰ると言っているだろう。はなせ」 「信用できるか、このバカ!」 すると今度は華奢なその体ごとぶつかるようにして俺を押し退けようとする。 思わず手首を引き上げて顔を覗き込むと、思いがけず泣きはらしたような痕があった。 「お前」 「眠りたくないのだ!」 俺はこのとき既に奴の事情の大半について知っていた。 だから尋ねた、悪い夢でも見るのかと。 クラピカは首を横に振るばかりで答えようとしない。 しかし俺はこのままで終わらせるつもりは毛頭なかった。 居心地が悪すぎる沈黙もやり過ごして、いつまでも奴が口を開くのを待った。 「悪い夢ならいい」 聞き取ることができたのが奇跡に近いほどか細い声。 「懐かしい人に遭って、目が覚めて全て夢だったとそのたびに気づかされるよりは…」 そこまでで奴は完全に口を噤んだ。 唇を噛むと、再び俯いてしまった。 ※ 39.薬に続く。(微エロ予定)