「夏の魔物」
※ 設定上「弟子ではない」のなんとなく続き。






まどろみかけたその時に、ごそごそと布団を捲る気配がした。
僅かな外気が首を撫でて、続くのは背中にぴたりとはりつく柔らかなモノ。
俺は精一杯、うんざりしたような声を出した。

「・・・断る」
「何を」
「お前が今考えていることを」
俺をこれ以上堕落させるな、ただでさえ後悔しているんだから、というと。
弟子はそのまま押し黙った。

視線の先に影が落ちる。
影は、背を向けたまま目をあわせようとしない俺を覗き込むようにしている。


いくら待っても。


こいつは、あの夜が何のつもりかなんて話そうとしない。
俺に、愛の言葉を囁く事もない。永久に。



昼間せいぜい傍若無人な態度を取って、詫びのつもりがこれなのかとも思う。
それとも、御し得ない憎悪をいっときでもコントロールする手段なのか。
あるいは、俺への慈悲のつもりなのか。まさか。



悶々と思い悩むうち弟子はもそもそと俺の体に這い登ってきた。
完全に上になりその重みで俺を押さえ込んだつもりの少女は、あからさまな哀願の口調で言う。
「・・・師匠?」
それだけで思考が霞む。
不器用に重ねられた唇は、やはり避けることはできなかった。



「お前は、本当に馬鹿だよ」
はじめて視線を交わし、本心からそう言ってやる。
覗き込む目は緋色でもなく。
そのうえ、なぜだか泣きそうなほどの安堵の表情を浮かべていた。




愛撫に皮膚が馴染むごとに思う、今だけは、これは自分のものだと。
もう痛みを堪えるような表情を浮かべることはなく、素直に快楽を受け入れて。
ささやかな乳房に舌を這わせる俺の頭をかき抱いて声を上げる。




親鳥に、もっと欲しいと餌を強請る、雛のようだ。




上気した膚から立上るにおいはやけに甘ったるくて、
行為とは裏腹の子供のようなそれは、俺を苛む棘になる。
こいつは別離まで俺に、治らない傷を刻み続けるつもりなんだろう。
繋がる場所で熱を共有しながら、喪失を怯える矛盾さえ、全て彼女の糧となるようで。



時折よぎる感情は恐怖と、そして憎しみにも似た何か。



ああ、どうでもいい、そんなこと。
俺のものなら全部、なんだってくれてやるから。
どうか、少しでも長く、そばに。


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全て暴いて欲しかった。
わたしは綺麗なわけじゃない、溺れ易い、どこもかしこも弱い人間。
だから。
全て暴いて欲しかった。


もっと乱暴にしてくれたらいいのに。
後悔しているのは知っている。
「お前は、本当に馬鹿だよ」
なのにその言葉にすら、責めるような響きはない。
師匠こそ、なんて当然言えなかった。




わたしは略奪者だ。
彼の誇りも慈悲の心も、全て奪ってしまおうとしている。
彼が辛そうな表情を浮かべるたびに、安堵する。
わたしに失望して。
もっとわたしを憎んで。



別離までには。
私を慈しむ心など、かけらほどしか、のこらないといいのに。