わたしはいくつになったの?
いちばん知りたかったことをかれに聞くと
10歳になる。
・・・10年、経った。
最近、髪の毛に白いものの混じり始めたかれは
ひどく穏やかな顔でそう答えた。
たぶん、自分はその人に似ているのだ。
今は既に確信に近いその想像をわたしはいつももてあます。
朝の早いかれが、いつも会いに行くその人に。
やめてくれと泣いて頼んだこともあった。
必要なことなんだと笑ってかわされたその時から、
私はその人が嫌いになった。
かれに近づくなと直接言えたらどんなに良いだろう。
あるいはわたしの手でその血の一滴までも灰に出来たらどんなに心がはれるだろう。
口惜しい気持ちで私はいつも、
かれの庭にいつまでも居座る無粋な石を、見る。
名前は刻まれていないけれど、
かれがいつもその石に呼びかける言葉をわたしは知っていた。
「クラピカ」と。
たからもののようにいとおしそうに。
「はじめに会ったとき、まずその綺麗な金髪に惹かれた」
まるで目の前にその対象があるように目を細めて、かれはいつものようにその人のことを話した。
直接言えたことはなかったけどな。
少年のようにはにかんで言葉を紡ぐ。
彼はその人と違って、私を褒めることに躊躇いはないようだった。
かれが私を綺麗だと言わない日はない。
それが誇らしいと同時に何故か、
僅かな敗北感を抱かせる。
---あなたが慈しむそのひとと同じようにわたしを扱って
---あなたが慈しむそのひとと、私を同じに扱わないで
こんな感情に付ける名前を私は知らない。
私は無意識のうち自分の金色の髪に触れていた。
これがかれと同じ黒い色だったら、
死者とあらそうようなこんな浅ましい感情は沸き起こらなかっただろうか。
わたしとどっちがきれい?
そう問うのはたやすいことだったが、その後に返ってくる答えを想像するの恐ろしさには耐えられず、
結局私はいつも口を噤むのだ。
私の膿んだ感情を無視してかれは続けた。
「次に、目」
「素直じゃない性格」
「…笑った顔だけは、好きになれなかったけどな」
「あいつは今のお前のようは笑えなかったんだ」
「俺はあいつの笑顔が嫌いだったんだ」
「邪気のない笑みを見せたその後に」
「罪悪感を隠そうとしないから」
私が綺麗だなんて嘘にきまっている。
じぶんの中のどろどろしたモノが、
今にも溢れてきそうで胸を押さえた。
その日、どうしようもない混乱が私を襲ってきて---9月はいつもこうだ---、
気がつくと庭のあの石の前で泣きじゃくっていた私に彼は言った。
「それをお前が壊すのなら、それがあいつにとっても良いことなんだ、きっと」
「お前が幸せなら、俺はなんだっていい」
私は彼に縋って泣いた。
「忘れるよ」
「今のお前だけを見るから」
「だからもう、泣くな」
初めて唇にキスをくれたその人が
私の眼を覗き込んで笑った。
「綺麗な赤だ」
何故その言葉だけが素直に私の心に届いたのかはわからない。
お前が望むなら、昔の仲間にもいつか会いに行こう。
そういうふうに笑うお前を、皆はなんと言って迎えるだろう?