Arachnophobia
いまは憎しみに身を任せよう
だから私を呼び戻さないで
だから私を繋ぎ留めないで
「クラピカ」
こえが、聞こえる。
知らない男の声。
ここは熱い、火の粉が舞っているから。
熱い。
一瞬、あの日の記憶の中の火の粉を錯覚し、
現実に引き戻されてすぐにそれが「冷たい」ものなのだと理解した。
・・・まったく。
またいったきりになってたぞ。
知らない声だと?
知ってる顔だ。知ってる。とてもよく。
多分、ここが私の現実だ。
傷を見られるとまずい。
さっきまではなかった筈の傷を覆うと、
隠すなと、やっとはっきりしてきた頭を釣瓶が襲ってきた。
こそこそ俺の目を盗んで抜け出しやがって。
死んだらどうする、と。
ぶつぶつ文句を言う男にいつもの台詞を言う。
男もいつものように流す。
恐れているのは他のこと。
緋の目をコントロールしようとして過去を思い出すたび、
私は、この憤怒に慣れてきているのだ。
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